The Moon Age Calendar DrawUp 1999/01/03
月の自転と公転周期は厳密には一致していませんが、殆ど等しいと考えて話を進めさせて戴きます。 「月の自転軸の方向は月に対しても空間に対しても固定していて、自転周期は公転周期に等しい。」 とされています。 なぜ等しいかと言うより、等しくなったと考えるのが自然ではないでしょうか? 確固たる説はないのが現状ですが、諸説があり以下のようなものが考えられています。 月誕生から6億年から10億年頃に巨大なクレーター(ベイズン)を生成するほどの微惑星の衝突が起こり、月内部からマグマが吹き出しベイズンの内部を埋め、現在の海が出来るようになったことで、重たい物質が大量に表面に浮上しその面(表面)が地球に向くようになった。 意外にも現在の表面は元々裏面であったという説もあります。 海を持つ裏面が、その後マスコンなどの重たい物質のため、地球側に向いて安定したとも考えられています。 その他、潮汐力によって月は前後に引っ張られる力が常に働いており、卵のような形になったことで、より安定して自転と公転が等しくなった。 また、月内部の液体(マグマ?マントル?)の粘性摩擦によって自転にブレーキがかかったため、公転と等しくなったというものもあります。 月の経度の永年項は減速項となっており、潮汐摩擦によって地球の自転速度が減少することで、月の公転角運動に永年加速を与えていることからも、両者の関係は明確に現れています。 月の公転と自転の周期は等しいと考え、月の自転運動の微細な動きについて触れていませんでしたが、ここで秤動という振幅運動について考えてみましょう。 |
月は平均的には同じ面を地球に向けていますが、地球上から見ると上下左右に揺れ動いているように見え、月面の約59%を見ることが出来ます。 これには大きく分けて2つの原因があります。 |
A:月が等速円運動ではなく、楕円運動をしているために太陽によって運動が乱され、左右に揺れるように見える現象を経度秤動と言います。 B:月の赤道面が月の軌道面に対して6.7度傾いているため、上下に揺れることで月の両極付近が余分に見え現象を緯度秤動と言います。 C:観測者が地表にいるために、月の出入りの時には月の上部が余分に見える現象を日周秤動と言います。 これらの3種類の秤動は、地表面にいる観測者から見る月の方向が変化することによるもので光学秤動または幾何学秤動と呼ばれています。 |
月の自転軸や自転速度の変化に起因する真の秤動を物理秤動または力学秤動と呼び区別しています。 これは月自体が球ではなく、地球方向に細長いラグビーボール型をしており、太陽と地球による引力によるトルクが働くために、月そのものが震動していることにより引き起こされています。 物理秤動は地球の回転運動における章動に対応していますが、その大きさは角度にして数分程度で、約7度にも達する光学秤動に比べて非常に小さいものです。 更に地球の極運動に相当する自由振動についても、月のレーザー観測から最近検出されるようになりました。 強制振動である物理秤動の振幅を定める月の物理定数の精度が悪いことと、レーザーによる観測期間が短いため、現在も完全なデータは得られていません。 自由振動の周期と振幅が高い精度で求められれば、月内部構造に関する情報が得られるとも考えられています。 |
VRMLによりモデリングされた月の秤動シミュレーション。解析のページより |
肉眼で見る月は常に同じ方向を向け決して裏を見ることは出来ませんが、天体望遠鏡を使って厳密に調べて行くと非常にゆっくりではありますが、震幅運動によって公転と自転の周期が必ずしも一致していないことにも気が付きます。 しかし、その差はごく僅かであり一般には公転と自転の周期はほぼ等しいと考えることが出来ます。 |