月には大気がないと言われています。 ごく簡単な光学的な観測によって、以前から知られています。 雲の形成や偏西風などのようなものは全く観測されていませんし、月の昼と夜の境目(月の欠け際)には全く薄明がないことや、星食の際に隠される星は突然姿を消し、また忽然と現れることから人類の月面着陸以前から、月の大気は地球の約2兆分の1でしかないことが分かっていました。 月の内部から、ガスが噴出し一時的に極端に希薄な大気が出来ることも考えられますが、月の脱出速度が2.37km/秒しかないため、すぐに月の引力から逃れて宇宙空間へと飛散してしまうでしょう。 しかし、月の表面下に水や氷のようなものが在るのではないかという報告から長年に渡り、随分と論議されてきましたが、最近の月の地震の研究から、水や氷の存在には否定的な結果が出ています。 (注):以下1998年3月に追記 ところが1994年1月に打ち上げられた月探査機クレメンタインによって極付近に水素分子が存在する可能性が得られたことから、1998年1月同探査機ルナープロスペクターが調査に向けられました。 結果的に大量の氷の存在が、ほぼ確実となりましたが、あくまで氷としてまとまった存在ではなく、岩石の中に含まれる形で散在していること、殆ど日光が当たらないことなどから、氷が溶け大気を生成すると言うことはには至らないでしょう。 |
月の表面温度は、昼と夜で大きく違います。 大気が無いという結果でもありますが、昼間は太陽光線が何の妨げもなく、月面に到達するため約118度までに熱されることになります。 逆に夜間では月面の熱が宇宙空間に発散され約−153度にまで下がってしまいます。 |
アポロ計画などにより地球にもたらされた月の試料によって月面鉱石などの研究が進められてきました。 月の試料は次の3つに分類されました。 |
1.泡状、結晶性、石漿性(せきしょうせい)の砕片、細かい粒子状及び中ぐらいの粒子状。 2.月の塵(個々の粒子は1cm以下)。 3.角礫岩(かくれきがん)月の塵を”固め焼き”した様々な岩石の破片。 |
岩石はほとんどが玄武岩質のもので、熔解したのちに固まったものと思われます。 それらの岩石が固まる前の石漿は、本質的に地球の玄武岩の場合よりも、さらさらした液体であったとされています。 また、月の岩石にはよく空洞が見られますが、冷却の際にガスが抜け出したためと言われています。 岩石の表面をよく観察するとクレーターのような窪みが見られます。 これは小さな隕石(ミクロ隕石)の落下衝撃によるもので、大気のある地球では決して見られないものです。 この岩石表面のクレーターの中には、本当のクレーターにもしばしば見られるような、中心に隆起した峰を持ったものがあります。 直径が1mmもない小さな落下抗の中にある隆起は、ガラス状鉱物から出来ています。 これは、落下衝撃の際に融けて変形したもので、球状、円筒状の他、不規則な形で、大きくても10分の数ミリメートル程度です。 |
鉱物には次のようなものが確認されています。 (a)輝石: 暗緑色あるいは暗褐色からほとんど黒色に至るまでの光沢を持つケイ酸塩で、地球上では地表で凝固した溶岩や凝灰岩の中に見られます。 b)プラジオクラス: これは長石の特別の形です。 c)チタン鉄鉱:トロイライト、鉄及びその他の不透明な物質(18%)。 黒褐色の鉄とチタン酸化物から出来ていて、トロイライトは黄鉄鉱のことです。 d)カンラン石、その他の透明な鉱物(2%):カンラン石はマグネシウムと鉄を含むケイ酸塩からなり、菱形で黄緑色の結晶を持つ玄武岩の中の主要な混合部分です。 月の塵の化学組成と地球地殻の上層の組成を比較してみるとシリコン(Si)とアルミニウム(Al)はほとんど同じ比率で、月の方が少し多いのは、鉄(Fe),マンガン(Mn),硫黄(S),コバルト(Co)で、逆に特に多いのはチタン(Ti),ニッケル(Ni)です。 一方アルカリ金属のナトリウム(Na),カリウム(K),バリウム(Ba)は、それほど多くありません。 銅(Cu),トリウム(Th),ウラン(U)についても同様です。 チタンの含有率が高いために岩石の色は暗く、ほとんど黒色です。 月の地殻の元素比率の平均的な数値は、地球地殻のものよりも、隕石のまれなグループの1つであるユークライトのものと似通っています。 ユークライトはカルシウム性の隕石で、高いタングステン含有率においても、月の試料と共通です。 このユークライトと月の岩石とが組成的に非常に似ているので、ユークライトは大きな隕石が月に落下した際に、表面から投げ出された月の岩石ではないかと考えている学者もいます。 |
宇宙飛行士達によって月面に設置された地震計は無数の地震を記録しました。 地球帰還時に不必要となった着陸船を落下衝突させ起こされた人工地震は、その後の記録した地震のものと同様の振動を残しました。 人工地震も自然の地震も小さな振幅から始まり、5〜12分後に最高に達します。 減衰は非常にゆっくりと7〜30分の半減期に起こり、地震の全継続時間は4時間にまで及ぶ程です。 地球上で同じ様な地震の場合1〜2分で次第に消えて行くことから、月では地震波の吸収が非常に少ないことが分かります。 このことは月の表層部が、振動を吸収する液体を含まないものから出来ていることを示しています。 地震記録の詳しい解析から、隕石の落下による地震はごく一部でしかないことも分かりました。 また、多くの地震は月が近地点近くに来たときに起こると言う統計を残した事も良く知られています。 その他、月面上の特定の地点で繰り返し地震が起こっていることも確認されました。 これは、地球との距離が近いとき、月に垂直方向の圧縮力と水平方向の引っ張りの力が加わり、このため亀裂が生じ、月面でのガスの放出という結果をもたらしているのではないかと考えられています。 そうだとすれば、月の地震は地殻構造的な現象ではなく、ガス火山作用に伴う現象と言うことになります。 また、月の地震は地球から観測される”月の閃光”(TBL)と統計的な関連性を持っているとも言われ、月が近地点近くに来るときに頻繁に起こったという報告などもあります。 これらの閃光現象は、実際にガス噴出の際に伴う現象なのかも知れません。 |